ニコリ111号、オモパ問答

終電を待つニコリスト二人の会話です。

「ニコリ111号が発売されて一ヶ月が経ちましたね。あなたは大層オモパがお好きですが、今日はひとつ、まとめてお話を聞かせてもらいたいのですが」
「そうだね。特に詳しいというわけではないが、オモパが好きだというのは間違いない。折角だから喋らせてもらおうか」
「今回の新作の中では、『お言葉抜け文』がお気に入りだと聞きました」
「(安)さんも書いているけど、オモパのコーナーよりハミダシが似合いそうなパズルだね。電車の中や歩いている時なんかに、紙を使わないで作れるのが素晴らしい。『十七文字さんこんにちは』とは違って問題形式だから、読者の立場としても、観賞だけでなく楽しめそうだ」
「解くにしても鉛筆が必要ないですね。手帳に書き留めたりすればもちろん、携帯電話やmp3プレーヤーのメモ機能を活用するのも良さそうです。いつでもどこでもといった感じですね」
「発展するにしても、オモパのコーナーではなさそうだけどね」
「他の新登場パズルはどうですか?」
「どれも、今後の展開が楽しみだね。まずは『お家へ帰ろう』について触れよう」
「矢印プラス部屋というと、『さとがえり』や『へやぼん』が思い浮かびます」
「『さとがえり』や『へやぼん』の時は思い浮かばなかったけど、実は丸数字の表現は不要というか、邪魔だったのではないだろうか。上の二つのパズルには、動かないと確定した○と確定していない○に区別がつかないという問題があった。もちろん運用でどうにでもなるのだけど。『お家へ帰ろう』を解くと、記号がアルファベットなので、動かないと確定した記号は○で囲んでしまえば、簡単に区別がつくようになった。細かいところではあるが、パズルが娯楽である以上、こういう工夫も重要だね」
「解き味の部分ではどうですか」
「こんなことを言うと誤解されるかもしれないが、受けにくいパズルだと思う。いまのところ、解き応えのある問題を作ろうとすると、広い範囲をいっぺんに決めるような問題になってしまうんじゃないか」
「一言でいうと、先読みに頼る問題になると」
「そう言ってもいいけど、どちらかというとナンバーリンクを理詰めでなるべく解こうとするような、玄人向けの楽しみになるんじゃないかな。まあ、ルールがシンプルなパズルの宿命だと思うよ」
「ですが、サクサク解ける問題ばかりでは、昇格が望めないのでは」
「そう思うので、二軍昇格⇒定食という通常の道は狙わないのはどうか」
「? 絵が出るパズルにするとか」
「おしい。絵を用いるんだ。特集ページやカラーページで、ある程度のストーリーを持ったパズルとして提供できて面白いと思う」
「なるほど。しかし聞いていると、『お家へ帰ろう』にせよ、『お言葉抜け文』にせよ、次回のオモパのコーナーでは会えないような気がしてきました」
「そうとは言っていないつもりだけどね。だが、次に残りそうという観点なら、有力なのは『ブロッダン』じゃないかな。いかにもこういうのが好きそうなパズル作家が何人も浮かぶよ」
「今、目の前にもいます」
「もちろんわたしも大好きだ。直系の先祖を思わせる『ワリタイ』、『タイコロ』もそうだけど、作っていて先が読めないところがいいね」
「逆に言えば、自分の思ったような問題が作れないということになりませんか」
「作りにくい、ということはあるかも知れない。でも、作りにくさの横綱の『波及効果』が定食化してペンパ本にもなる御時勢だからね。それが、必ずしも普及の妨げになるとは限らないんじゃないかな」
「最後に『ゴネクション』が残りました」
「なんといっても遊び方2が独特だね。惜しむらくは解いてみると、遊び方1と3で解けていって、遊び方2の印象が薄いかなと思えてしまう。逆に言うと、そこを生かした問題が作れれば化けるかも知れない。また、この遊び方2を、魂の部分で生かした新しいオモパが出来るかもしれないね。
電車の到着にはまだ時間があるようだ。缶コーヒーでも買って、そのあと復習編について喋ろうか」